広島地方裁判所 平成8年(ワ)584号 判決 1997年4月18日
主文
一 第一事件原告の請求を棄却する。
二 第二事件原告の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、第一事件に関するものは第一事件原告の、第二事件に関するものは第二事件原告の負担とする。
事実及び理由
第一 請求
(第一事件)
第一事件被告は第一事件原告に対し、六五万五一三四円及びこれに対する平成八年二月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(第二事件)
第二事件被告は第二事件原告に対し、九一万八六〇五円及びこれに対する平成八年一二月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
一 当事者の呼称
以下、第一事件原告を「原告岩岡」と、第二事件原告を「原告桑元」と、第一事件・第二事件被告を「被告会社」という。
二 本件は、貸金業者から、借入金等の返済を求められた連帯保証人が、裁判中、右請求に応じて支払ったが、右借入については、貸金業法の規制等に関する法律に反するから、利息制限法を越える利息を支払う必要はなく、右支払いは過払いである等として、不当利得請求権に基づきその返還を請求したという事案である。
三 争いのない事実及び証拠によって認定した前提事実
1 被告会社は、登録番号広島県知事(1)第〇一四七五号の登録(有効期間・平成二年一一月二一日から平成五年一一月二〇日)、九州財務局長(4)〇〇〇〇一号の登録(有効期間・平成四年一二月二〇日から平成七年一二月一九日)を受けて、「株式会社シティズ」の名称で貸金業を営むものである(甲1、2)。
2 消費貸借契約及び連帯保証契約の成立
(一) 被告会社は珍坂政生(以下「珍坂」という。)に対し、平成四年九月三〇日、利息・損害金三九・八〇パーセントの約定で一五〇万円を貸し付けた(以下「本件消費貸借契約1」という。)。
原告桑元は被告シティズに対し、右同日、珍坂が本件消費貸借契約に基づき負担する債務について、連帯保証する旨約した(以下「本件連帯保証契約1」という。)。
(二) 被告会社は珍坂に対し、平成五年六月四日、利息・損害金三九・八〇パーセントの約定で一〇〇万円を貸し付けた(以下「本件消費貸借契約2」という。)。
原告岩岡は被告会社に対し、右同日、珍坂が本件消費貸借契約に基づき負担する債務について、連帯保証する旨約した(以下「本件連帯保証契約2」という。)。
3(一) 珍坂は、平成四年一〇月二六日、本件消費貸借契約1に基づき支払うべき元利息の支払いを怠った。
(二) 珍坂は、平成六年四月四日、本件消費貸借契約2に基づき支払うべき原理金の支払いを怠った。
4(一) 原告岩岡は被告会社に対し、平成八年二月二一日、七二万六〇二八円を支払い、被告会社は、本件連帯保証契約2に基づく債務として、これを受領した。
(二) 原告桑元は被告会社に対し、平成八年一二月二〇日、八四万八九八一円を支払い、被告会社は、本件連帯保証契約1に基づく債務として、これを受領した。
5 平成八年九月二四日の第九回口頭弁論期日において、被告会社の詐欺を理由として、原告桑元は被告会社に対し、本件連帯保証契約1締結の意思表示を取り消す旨の、原告岩岡は本件連帯保証契約2締結の意思表示を取り消す旨の、各意思表示をした(当裁判所に顕著な事実)。
6 なお、充当関係については争いがあるが、実際に被告会社が弁済を受けた年月日及び金額については争いがない。
二 争点
1 本件消費貸借契約1及び本件消費貸借契約2における返済方法及び期限の利益喪失約款の有無
(一) 被告会社の主張
(1) 本件消費貸借契約1において、被告会社と珍坂は、次のとおり合意した。
<1> 平成四年一〇月から平成九年九月まで毎月二五日限り元金二万五〇〇〇円ずつを経過利息と共に支払う方法で返済する。
<2> 右元利金の支払を怠ったときは、通知催告なくして期限の利益を喪失する。
(2) 本件消費貸借契約2において、被告会社と珍坂は、次のとおり合意した。
<1> 平成五年七月から平成一〇年九月まで毎月三日限り元金一万六〇〇〇円ずつを経過利息と共に支払う方法で返済する。
<2> 右元利金の支払を怠ったときは、通知催告なくして期限の利益を喪失する。
(二) これに対し、原告桑元は右(1)<1><2>記載の合意はなかったと主張し、原告岩岡は右(2)<1><2>の合意はなかったと主張する。
2 被告会社は、本件消費貸借契約1及び本件連帯保証契約1を締結した際、珍坂に対し、貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)一七条一項、同法施行規則一三条所定の書面(以下「法一七条一項所定の書面」という。)を、原告桑元に対し、貸金業法一七条二項、同法施行規則一四条所定の書面(以下「法一七条二項所定の書面」という。)を、本件消費貸借契約2及び本件連帯保証契約2を締結した際、珍坂に対し法一七条一項所定の書面を、原告岩岡に対し法一七条二項所定の書面を、各交付したか。
被告会社は、これらを各交付したと主張し、被告らは、右各契約の際、書面交付は受けたがその内容が不十分であったと主張する。
3 被告会社は、珍坂や原告らから弁済を受ける都度、直ちに貸金業法一八条、同法施行規則一五条所定の受取証書(以下「法一八条所定の受取証書」という。)を交付したか。
被告会社はこれを交付したと主張し、原告らは、被告会社が弁済を受けた際発行した書面には契約年月日の記載がないので、法一八条所定の受取証書に該当しないし、また、弁済を受ける都度その交付を受けたかは不明であると主張する。
4 珍坂は被告会社に弁済する都度、別紙元利金計算書1及び同2記載のとおり、返済充当の指定をしたか。仮にしていないとして、右充当方法は適法か。
5 珍坂が期限の利益を喪失した時期
被告会社は、前記一3記載の時点で、珍坂は期限の利益を喪失したと主張し、原告らは、元利金の支払いが遅れた後も、被告会社は一括請求をせず、弁済を受けており、したがって、その時点では期限は猶予されたのであって、被告会社主張の時点で期限を喪失したものではないと主張する。
6 本件消費貸借契約1及び本件消費貸借契約2にかかる貸付は貸金業法一三条所定の過剰貸付か。
7 本件連帯保証契約1及び本件消費貸借契約2締結の際、被告会社従業員の欺罔行為があったか。
原告らは、被告会社の従業員が原告らに対し、珍坂の借入状況及び返済能力につき、誤信を生じさせる事実を述べて保証契約の締結に誘導していると主張する。
8 本件各消費貸借契約につき、過払いとなっているか。
被告会社は、本件消費貸借契約1及び本件消費貸借契約2については、貸金業法四三条一項所定のみなし弁済規定の適用があるから、利息制限法所定の利率を超えて支払った超過部分も有効な弁済となり、約定利率により計算すれば、その充当関係は、別紙元利金計算書1及び同2記載のとおりとなり、過払いはないと主張する。
原告らは、本件消費貸借契約1及び本件消費貸借契約2については貸金業法四三条一項所定のみなし弁済規定の適用はないと主張し、利息制限法所定の利率により計算すれば、原告桑元については、別紙計算書1のとおり過払いとなり、原告岩岡については、別紙計算書2のとおり過払いとなると主張する。
第三 当裁判所の判断(省略)
(別紙)
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(別紙)
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計算書1
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計算書2
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